令和5年 安全衛生部長年頭所感

年頭所感

令和5年 安全衛生部長年頭所感
厚生労働省労働基準局
安全衛生部長 美濃 芳郎

安衛部長

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。令和5年の年頭に当たり、改めて日頃の労働安全衛生行政への御理解と御協力に感謝申し上げます。

 労働安全衛生法の施行から50年が経過いたしました。法の施行以降、労働災害は大きく減少し、半世紀にわたりその役割を果たしてまいりました。引き続き、その役割を果たせるよう、取り組んでまいります。

 近年の労働災害の発生状況を見ると、労働災害による死亡者数こそ減少しているものの、未だその水準は低いとは言えず、労働災害による休業4日以上の死傷者数に至っては、ここ数年増加傾向にあります。労働災害発生率が高い60歳以上の高年齢労働者が増加しているほか、中小事業場の労働災害が多数を占めており、従前と異なる視点での取組も求められています。
 また、労働者の健康保持増進に関しては、メンタルヘルスや働き方改革に加え、労働者の高年齢化や女性の就業率の増加に伴う対応、治療と仕事の両立支援、テレワークの拡大への対応など多様化しており、ニーズの変化を踏まえた産業保健体制や活動の見直しが重要となっています。
 さらに、化学物質による重篤な健康障害の防止や石綿使用建築物の解体等工事に係る対策の着実な実施が必要となっております。

 これらの課題に総合的に対応するため、現在、令和5年度を初年度とする5か年計画「第14次労働災害防止計画」の検討を進めています。検討に当たっては、主に次のような4点を念頭に置いております。
 第一は、事業者に求められる各種措置の徹底を図ることに加え、事業者による自発的な安全衛生対策の取組が進むよう、そうした取組が、事業者にとって経営や人材確保・育成の観点からもプラスとなることを周知し、安全衛生対策に取り組む事業者が社会的に評価される環境の整備を進めていくことです。
 第二は、死亡災害ゼロを目指し、建設業における墜落・転落災害、製造業における施設・設備・機械に起因する災害の防止を始めとする対策の徹底を図っていくことです。また、死傷災害の増加への対策として、労働者の作業行動に起因する労働災害防止や高年齢労働者の安全衛生確保の取組を推進していくことです。
 第三は、働く人の安心と健康を確保するべく、過重労働による健康障害防止対策、職場におけるメンタルヘルス対策、治療と仕事の両立支援の更なる推進を図ることです。また、ニーズの変化を踏まえた、より効果的な産業保健活動の在り方について検討を進めていくこともあります。
 第四は、化学物質等による健康障害防止のため、個別規制の対象外となっている危険性・有害性等を有する化学物質の自律的管理規制の定着、建築物等の解体・改修工事における石綿ばく露防止対策等を推進していくことです。
 これらを主な内容として計画案を検討しており、令和5年度から、新たな計画に基づき、各種対策に取り組んでまいります。

 職場における安全と健康は、基本であり根幹です。労働災害防止団体や労使団体を始め関係者の皆様と連携し、日々の仕事が安全で健康なものとなるよう取組を進めてまいる所存です。今後とも、労働安全衛生行政への一層の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。