令和7年労働基準局長年頭所感

年頭所感

令和7年労働基準局長年頭所感
厚生労働省労働基準局長 岸本 武史

 あけましておめでとうございます。
 新年を迎え、心からお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願い申し上げます。
 令和七年の年頭に当たり、改めて日頃の労働基準行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の労働基準行政について述べさせていただきます。
 第一に、賃金の引上げについてです。
 最低賃金については、昨年、昭和五十三年度に目安制度が始まって以来最大となる全国加重平均五十一円の引上げが行われ、千五十五円となりました。政府においては、二千二十年代に全国平均千五百円という高い目標に向かってたゆまぬ努力を続けていくこととしており、中小企業が持続的に賃上げできる環境整備が一層重要となってきます。
 このため、中小企業の賃金引上げと設備投資等に対して、業務改善助成金による支援を続けます。さらに、関係省庁と連携して、生産性向上を始めとする各種支援策・好事例等の周知広報、価格転嫁の徹底などに取り組んでまいります。

 第二に、労働安全衛生対策についてです。
 労働者の健康と安全については、個人事業者等の安全衛生対策の推進、ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策の推進、化学物質の新たな自律的管理制度の施行や規制対象物質の拡大への対応、高年齢労働者の労働災害防止等、様々な課題が生じています。
 このため、これらの課題への対応等について、関連する検討会での議論等を踏まえ、昨年4月から、労働政策審議会安全衛生分科会においてご議論いただいているところであり、法的整備も含めた所要の措置について、引き続き検討を進めて参ります。

 第三に、働き方改革に関する対応についてです。
 昨年4月から、建設業、自動車運転者等にも時間外労働の上限規制の適用が開始されています。引き続き、労働時間削減等に向けた支援を行ってまいります。
 また、働き方改革関連法の施行から5年が経過したこと等を踏まえ、学識者による「労働基準関係法制研究会」を開催し、労働時間法制や労使コミュニケーションの在り方等について精力的に御議論いただきました。これを踏まえ、今年は、労働政策審議会に議論の場を移して、引き続き検討を進めてまいります。

 第四に、フリーランス就業環境の整備についてです。
 昨年十一月のフリーランス・事業者間取引適正化等法の施行に合わせて、全国の労働基準監督署に、「労働者性に疑義がある方の労働基準法等違反相談窓口」を設置しました。フリーランスとして契約しながら実態は労働者となっている方々の労働環境の整備に努めます。
 また、同じタイミングで、労災保険の特別加入制度の対象に、同法に規定するフリーランス等を追加したところであり、引き続き円滑な施行・周知に努めてまいります。

 第五に、過労死対策についてです。
 近年、過労死等に関する労災支給決定(認定)件数は増加傾向にあります。令和五年度では、脳・心臓疾患事案で二百十六件、精神障害で八百八十三件でした。
 本年は、「過労死等の防止のための対策に関する大綱」が平成二十七年に初めて策定されてから十年の節目を迎えます。昨年見直された大綱には、これまでの成果を振り返りつつ、時間外労働の上限規制の遵守徹底や、フリーランス等への対策の強化といった新たな課題への対応についても盛り込んだところです。この新たな大綱に基づき、強い使命感を持って、過労死等のない社会を実現するための取組を着実に進めてまいります。

 働き方の個別化・多様化をはじめ、労働者や企業を取り巻く環境が変化する中でも、労働条件がしっかりと確保できるよう、職員一同全力を挙げて取り組んでまいりますので、今後とも、一層の御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げ、新年の挨拶とさせていただきます。