令和6年安全衛生部長年頭所感

年頭所感

令和6年 安全衛生部長年頭所感
厚生労働省労働基準局
安全衛生部長 小林洋子

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。令和6年の年頭に当たり、改めて日頃の労働安全衛生行政への御理解と御協力に感謝申し上げます。

 近年の労働災害の発生状況を見ると、労働災害による死亡者数は減少しているものの、労働災害による休業4日以上の死傷者数については、増加傾向にあります。これは労働災害発生率が高い高年齢労働者が増加しているほか、我が国の大半を占める中小規模事業場において安全衛生に関する取組が必ずしも十分とは言えない状況があることなどが要因と受けて止めております。林業においては令和5年10 月末速報で、死亡者数が21 人と前年同期比12.5%減となっておりますが、依然として死亡災害の発生率が高いところであり、引き続きの取組が必要であると考えております。
 また、精神障害による労災認定件数は年々増加しているとともに、何らかの疾病を抱えながら働く労働者も増加しています。こうしたことを踏まえ、メンタルヘルス対策の強化を含む産業保健活動を推進していく必要があります。
 さらに、化学物質による健康障害の防止や石綿使用建築物の解体等工事に係る対策の着実な実施が必要となっております。

 これらの課題に対応するため、今年度を初年度とする「第14 次労働災害防止計画」において、中高年齢の女性を中心とした労働者の作業行動に起因する労働災害防止対策、高年齢労働者の労働災害防止対策、業種別の労働災害防止対策、労働者の健康確保対策の推進、化学物質等による健康障害防止対策の推進等、8つの重点事項を掲げ、重点事項ごとの取組を推進しております。

 高年齢労働者の労働災害防止対策を推進するため、「エイジフレンドリーガイドライン」に基づく対策を実施する中小事業者等に対する支援を行います。特に、中高年齢の女性労働者を中心に転倒等の増加が顕著であることから、作業場所の床や通路の躓き対策等と併せて、スポーツの習慣化等を通じた労働者の身体機能の維持向上の取組を推進していきます。

 また、依然として重篤な災害が発生している伐木等作業における労働災害を防止するため、労働安全関係法令及び「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」や、「林業の作業現場における緊急連絡体制の整備等のためのガイドライン」等に基づき、安全な伐倒方法やかかり木処理の方法、保護具の着用、緊急時における連絡体制等の整備等について引き続き取り組んで頂きますようお願い申し上げます。

 さらに、個人事業者等に対する安全衛生対策についても令和4年5月から個人事業者等に関する業務上の災害の実態把握、有効と考えられる安全衛生対策のあり方などについて検討を進め、昨年10 月末に報告書を公表しております。本年は、報告書を踏まえ、法令改正等の検討を進めてまいります。

 大切な従業員の安全と健康を守ることは事業者の責務です。さらに、安全衛生への取組は、労働災害発生に伴う経済損失を回避・軽減することができるだけでなく、安全な職場であることのPR 等を通じて人材の確保・定着を可能とし、職場の活性化につながるものです。つまり、「コスト」ではなく「投資」だと考えています。こうした、基本的な考え方のもと、労働災害防止団体や労使団体を始め関係者の皆様と連携し、日々の仕事が安全で健康なものとなるよう取組を進めてまいる所存です。今後とも、労働安全衛生行政への一層の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げます。