令和7年安全衛生部長年頭所感

年頭所感

令和7年 安全衛生部長年頭所感
厚生労働省労働基準局
安全衛生部長 井内 努

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。令和7年の年頭に当たり、改めて日頃の労働安全衛生行政への御理解と御協力に感謝申し上げます。
 我が国の労働災害の発生状況を見ると、死亡者数は長期的には減少傾向にあり、令和5年には755人と過去最少となったものの、令和6年11月の速報値を見ると、前年同期比では死亡者数は増えており、未だ多くの人命が失われている状況です。また、近年、休業4日以上の死傷者数は増加傾向にあり、令和5年には13万5,371人と3年連続で増加しています。
 また、近年の労働安全衛生を巡る動きとして、個人事業者等の安全衛生対策、小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の推進、高年齢労働者の労働災害防止等、様々な課題が生じています。

 このため、関連する検討会での議論等を踏まえ、昨年4月から、①個人事業者等に対する安全衛生対策の推進、②ストレスチェック制度等のメンタルヘルス対策の推進、③高年齢労働者の労働災害防止対策の推進等について、労働政策審議会安全衛生分科会においてご議論をいただいてきたところです。
 個人事業者等に対する安全衛生対策については、建設アスベスト訴訟の最高裁判決(令和3年5月)において、労働安全衛生法第22条は労働者だけでなく、同じ場所で働く労働者でない者も保護する趣旨との判断がなされたことを踏まえ、二度の省令改正や健康管理ガイドラインの策定等の必要な対応を行ってきました。現在は、「個人事業者等に対する安全衛生対策のあり方に関する検討会」報告書(令和5年10月)において示された、個人事業者等自身や注文者等が講じるべき措置、個人事業者等の業務上災害の報告制度の創設等についての方向性や内容について検討を進めています。
 また、事業場のメンタルヘルス対策については、労働者数50人未満の小規模事業場におけるメンタルヘルス対策の取組が低調となっていることなどを踏まえ、昨年3月から検討会を開催し、昨年11月に示された中間とりまとめでは、現在、努力義務となっている50人未満の事業場におけるストレスチェックの実施について、義務化が適当である旨が示されており、同中間とりまとめを踏まえ、検討を進めています。
 さらに、高年齢労働者は、雇用者数の全体に占める割合も増加する中、他の世代と比べて労働災害の発生率が高く、災害時の休業期間が長いといった特徴があります。これは、作業による労働災害リスクに、加齢による身体機能の低下等の高年齢労働者の特性に起因するリスクが付加されることによるものと考えられます。こうした状況を踏まえ、高年齢労働者の特性に配慮した作業環境の改善、適切な作業の管理その他の必要な措置を講じることを事業者の努力義務とすることなどの高年齢労働者の労働災害を防止するための対策の充実について、検討を進めています。
 加えて、新しい化学物質の自律的管理の仕組みの対象が令和8年4月に約2,900物質まで拡大する予定であることを踏まえ、①SDS交付等による通知制度の履行確保や、②通知対象となる成分名が企業の営業秘密に該当する場合の営業秘密情報の保護、③リスクアセスメント等において個人のばく露の程度の把握を行うために実施する「個人ばく露測定」の精度担保などの対応も進めてまいります。
 その他、機械等による労働災害防止の推進や、治療と仕事の両立支援対策等を含め、こうした課題について、安全衛生分科会において議論の取りまとめを行っていただき、必要な対応をしっかりと進めてまいります。

 また、依然として重篤な災害が発生している伐木等作業における労働災害を防止するため、労働安全関係法令及び「チェーンソーによる伐木等作業の安全に関するガイドライン」や、「林業の作業現場における緊急連絡体制の整備等のためのガイドライン」等に基づき、安全な伐倒方法やかかり木処理の方法、保護具の着用、緊急時における連絡体制等の整備等について引き続き取り組んで頂きますようお願い申し上げます。

 今後とも、労働安全衛生行政への一層の御理解と御協力を賜りますよう、お願い申し上げまして、新年の挨拶とさせていただきます。