令和8年労働基準局長年頭所感

年頭所感

厚生労働省労働基準局長 岸本 武史

 あけましておめでとうございます。
 新年を迎え、心からお慶び申し上げます。本年も何とぞよろしくお願いいたします。
 令和八年の年頭に当たり、改めて日頃の労働基準行政への御理解と御協力に感謝申し上げますとともに、今後の労働基準行政について申し上げます。

 第一に、働き方改革の推進についてです。
 時間外労働の上限規制も含めた労働時間規制については、引き続き、その適正な運用が図られるよう、厳正な監督指導を行うとともに、丁寧な相談支援に努めてまいります。また、令和六年四月から時間外労働の上限規制の適用が開始された建設業、自動車運転者等については、取引慣行の改善も含め、関係省庁と連携して働き方改革の取組を進めてまいります。
 また、働き方改革関連法の施行から五年を経過すること等を踏まえ、現在、労働政策審議会労働条件分科会において、労働基準関係法制の在り方等について御議論いただいているところであり、引き続き、働き方の実態やニーズを踏まえつつ、労使の御意見を十分にお聞きしながら検討を深めてまいります。

 第二に、賃金の引上げについてです。
 最低賃金は、今年度、目安制度が始まって以来最大となる全国加重平均六十六円の引上げが行われ、千百二十一円となります。
 最低賃金引上げへの対応を含め、企業が継続的に賃上げできる環境を整えることが重要であると考えており、政府全体で生産性向上支援や更なる取引適正化等に取り組んでいます。
 厚生労働省としても、業務改善助成金を始めとする「賃上げ」支援助成金パッケージにより、中小企業・小規模事業者の賃金引上げと設備投資等を後押ししてまいります。また、関係省庁と連携して、各種支援策・好事例等の周知広報、取引適正化の徹底などに取り組んでまいります。 

 第三に、労災保険法等の見直しについてです。
 労災保険法等の見直しについては、遺族補償年金等の支給要件の男女差の解消や災害補償請求権等の消滅時効期間の見直しなど様々な論点があり、有識者で構成される研究会において昨年七月に中間報告書が取りまとめられました。その後、同報告書を踏まえ、労働条件分科会労災保険部会において御議論いただいているところであり、法的整備も含めた所要の措置について、引き続き検討を進めてまいります。  

 第四に、労働安全衛生対策についてです。
 林業・木材製造業における令和六年の労働災害をみると、死亡者数は三十五名と前年より三名減少し、休業四日以上の死傷者数についても、二千百九十二名と前年より二十二名減少しておりますが、いずれも減少傾向は近年鈍化しており、引き続き労働災害防止のための努力が求められています。
 昨年五月に公布された改正労働安全衛生法等は、個人事業者等に対する安全衛生対策の推進、職場のメンタルヘルス対策の推進、化学物質による健康障害防止対策等の推進、機械による労働災害の防止の促進、高年齢労働者の労働災害防止の推進を主な内容としております。
 これらの改正事項については、本年四月一日を中心に段階的に施行されることとなっており、厚生労働省では、その円滑な施行に向けて、政省令や指針等の整備を進めるとともに、改正内容の周知に取り組んでまいります。

 第五に、過労死等防止対策についてです。
 令和六年度の過労死等の労災支給決定(認定)件数は、脳・心臓疾患事案で二百四十七件、精神障害事案で千五十七件でした。精神障害事案に関する労災支給決定(認定)件数は増加傾向にあり、これまでの長時間労働対策に加え、メンタルヘルス対策やハラスメント防止対策など、働く方の環境を改善していくことの重要性が高まっています。
 こうした課題も踏まえて令和六年に見直された「過労死等の防止のための対策に関する大綱」に基づき、強い使命感を持って、過労死等のない社会を実現するための取組を着実に進めてまいります。

 労働者や企業をめぐる環境は常に変化していますが、そのような中でも労働条件が適切に確保されるよう、職員一同全力を挙げて職務に取り組んでまいります。

 本年も引き続き、労働基準行政への御理解、御協力を賜りますようお願い申し上げ、新年の御挨拶とさせていただきます。