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災害事例研究 No.179 【林業】

機械集材装置で伐倒木を巻き上げたところ、付近の伐倒木が滑落し伐倒木と伐倒木の間に身体がはさまれた

機械集材装置を用いて谷側の土場へ集材するため、被災者は伐倒木の荷掛けを行い、機械集材装置の運転者へ巻き上げの合図を送り、巻き上げを開始したところ、被災者の付近にあった他の伐倒木が滑落し、伐倒木と伐倒木の間に身体がはさまれた。

災害の発生状況

 作業現場はスギ・ヒノキの人工林2ヘクタールの立木を皆伐し、機械集材装置(エンドレスタイラー式)により林道付近の土場へ全幹集材する現場で、被災者は、原木の荷掛け作業に従事していた。
 被災者側の作業手順は、①原木を荷掛けしたのち退避し、②退避場所から集材機の操作者へ無線機による巻上げの合図を行うというものであったが、巻上げ合図後、しばらく集材機の運転者へ応答が無かったため運転者が運転を停止し、被災者のいる作業箇所に急いで向かったところ、被災者は2本の原木にはさまれている状態であった。
 被災者は荷掛けする場所の付近にあった原木3本は、斜面上側から、原木C、原木B、原木Aの順に伐倒され、被災者はCとBの間にいたところ、荷掛けしていたA(胸高直径24cm、樹高25m)の上にC(胸高直径40cm、樹高26m)の末口側が乗っていた状態で巻き上げたため、Cが滑落し、被災者はCとB(胸高直径40cm、樹高26m)の間にはさまれた。
 なお、退避場所は作業者の判断としていたこと、A材の元口側は接地した状態であったこと、集材機の運転者と付近でプロセッサを操作していた者からは、被災者は見えない位置にいたことが認められた。

災害の発生原因

  1. 安全な場所に退避して、巻き上げの合図を行っていなかったこと。
  2. 集材している場所で、他の原木が転落し作業者に危険を及ぼす箇所に立ち入っていたこと。
  3. 斜面上で、重なっている原木の内、下にある原木から集材しようとしたこと。
  4. 作業計画を作成していなかったこと。

災害の防止対策

  1. 巻き上げの合図は、安全な場所へ退避した後に行うこと。
  2. 斜面での荷掛け作業は斜面上側の原木から行うこと。
  3. 原木の荷掛け又は集材している原木の斜面下方で原木の転落等により作業者に危険の及ぼすおそれのあるところに立ち入らないこと。
  4. 重なっている原木を荷掛けするときは、原則として上の原木から行うこと。その場合、重なっている他の原木を安定させてから荷掛けをする、集材箇所の下方の立入禁止措置を徹底する等の措置を講じること。
  5. 事前調査とリスクアセスメントを行い、作業計画を作成すること。
  6. 作業指揮者を定め、作業指揮者に作業計画に基づき作業の指揮を行わせること。

〈労働安全衛生規則〉
(立入禁止)
第151条の142 事業者は、林業架線作業を行うときは、次の箇所に労働者を立ち入らせてはならない。
 一 略
 二  原木等を荷掛けし、又は集材している場所の下方で、原木等が転落し、又は滑ることにより労働者に危険を及ぼすおそれのあるところ
 三 略

(作業計画)
第151条の125 事業者は、林業架線作業を行うときは、あらかじめ、前条の規定による調査により知り得たところに適応する作業計画を定め、かつ、当該作業計画により作業を行わなければならない。
2  前項の作業計画は、次の事項が示されているものでなければならない。
 一~五 略
 六 林業架線作業の方法
 七 略
3  事業者は、第1項の作業計画を定めたときは、前項第一号、第二号、第四号、第六号及び第七号の事項について関係労働者に周知させなければならない。

(作業指揮者)
第151条の128 事業者は、林業架線作業(令第6条第三号の作業を除く。)を行うときは、当該作業の指揮者を定め、その者に第151条の125第1項の作業計画に基づき作業の指揮を行わせなければならない。

〈林業・木材製造業労働災害防止規程〉
(立入禁止)
第209条 会員は、林業架線作業を行う場合には、次の各号のいずれかに該当する箇所には、立ち入りを禁止する旨の明確な表示を行い、第2項に定める場合を除き、作業者を立ち入らせてはならない。
(1) 略
(2) 原木等を荷掛けし、又は集材している場所の下方で、原木等が転落し、又は滑ることにより、作業者に危険を及ぼすおそれのあるところ
 (3)~(4) 略
 (5)  その他作業者に危害を及ぼすおそれのある箇所
2 略

(作業計画)
第190条 会員は、林業架線作業を行う場合は、第188条の調査結果及び前条のリスクアセスメントの結果に適合し、かつ、次の各号に掲げる事項を含む作業計画を定め、当該作業計画に基づき作業を行わなければならない。
 (1)~(5) 略
 (6) 林業架線作業の方法
 (7)~(8) 略
 (9) 調査及び記録を踏まえたリスクアセスメント結果に基づくリスクの低減対策
2 会員は、前項の作業計画を定めたときは、同項各号に掲げる事項(第3号及び第5号に掲げる事項を除く。)を関係作業者に周知させるとともに、当該計画により作業を行い、また、作業指揮者に指揮させなければならない。

(荷掛け作業)
第234条 会員は、荷掛け作業を行う場合には、作業者に、次の各号に掲げる事項を行わせなければならない。
 (1) 略
 (2) 巻き上げの際には、安全な箇所に退避した後、巻き上げの合図をすること。