災害事例研究 No.86 【林業】
走行集材機械でバック走行し谷側に寄りすぎたため、前進させたところ作業道から沢へ転落して運転者は走行集材機械の下敷きになった
造材するために走行集材機械で休憩所にチェーンソーを取りに行く途中、バック走行したところ谷側に寄りすぎたため、前進させたところ沢へ転落し、運転者は走行集材機械の下敷きになり死亡したものである。
災害発生の状況
伐採(間伐)作業現場において、約1km離れた休憩所に造材のためのチェーンソーを取りに走行集材機械で作業道を走行、被災者は走行集材機械を休憩所前で旋回しなくていいように、3回目(最後)のスイッチバックからバックで走行させ、左カーブ(幅員3 . 5m、傾斜なし)で走行集材機械が搬出路の谷側に寄りすぎたため、一旦停止して山側に車体を戻そうと4 . 1m前進したところ、谷側のキャタピラが沢側に滑り出し走行集材機械が横に一回転した後、前方を下に向けた状態で沢の途中に停止した(斜距離17 m、傾斜約34°)。運転席にいた被災者は、何らかの原因で滑落中に車外へ放り出され、運搬車の下敷きになったものと推測される。
また、被災者は、保護帽を着用していたが、転落途中にあご紐が切れた状態で脱げていた。
災害の発生原因
- バック走行をしたことにより、運転者から沢側が死角となり、路肩を確認できなかったこと。
- シートベルトを装着していなかったこと。
- バック走行を前提とした作業道を作設したこと。
災害の防止対策
本災害の対策としては、
- シートベルトを装着し、車外へ放り出されないようにすること。
- スイッチバック等によりバック走行をしなくてもすむように、終点に車廻しを作設すること。
ただし、地形等によりやむをえずスイッチバックを設ける場合は、バック走行する区間を極力短かくするとともに、車道幅員も広くすること。 - 転倒・転落するおそれのある箇所は、誘導者を配置すること。
近年、車両系木材伐出機械による死亡災害が多発しており、今回の事例のように「作業道等から転落及び転倒」し機械の下敷きになるとか、機械に挟まれる災害が後を絶たない状況である。
平成26年6月1日に、改正労働安全衛生規則が施行され、この中で「転倒や転落により労働者に危険が生じるおそれのある場所で車両系木材伐出機械を使用するときは転倒時保護構造があり、シートベルトを備えたもの以外の機械を使用しないように努めること」とされたところである。シートベルトを装着していれば車外へ放り出されて機械の下敷きになるなどの災害は防げることから、シートベルトの装着を指導することが重要である。